
長期金利の指標となる10年国債
もっとも馴染みがあり現在発行されている国債の中心は、満期までの期間が10年物です。
10年固定金利型国債は原則として毎月発行され、募集期間中であればいつでも買い求めることができます。購入単位は額面基準で5万円から5万円単位。
利子が支払われるのは年に2回で、銘柄ごとにたとえば6月と12月とか、5月と11月というようにあらかじめ定められています。
発行額=流通量が多いため、他の債券に比べて換金が容易であるという特徴を持ちます。満期以前に換金するに際しては原則として、流通市場で売却します。
この国債を巡って銀行、証券会社、機関投資家などがきわめて積極的な売買を行なっていることから、ここで付いた利回りが日本の長期金利の指標的な存在とみなされています。
たとえば「日本の長期金利が上昇」と報道された場合には、この10年長期国債の市場での売買利回りを指し示すのが普通です。
2年~5年の中期国債
日本政府は歳入不足を埋めるために、毎月のように巨額の国債を発行していますが、できるだけそれを円滑に引き受けてもらうために、様々な種類の国債が用意されています。
種類が多いほうがそれだけ、様々な投資家ニーズに応えられるからです。その一環として期間2年、5年という中期の国債がほぼ毎月発行されています。これを中期利付国債と呼びます。
いずれも固定金利型国債として発行されています。主に銀行、企業のほか機関投資家によって取得・保有されます。
期間10年超で発行される超長期債
債券の年限については期間6〜10年を長期債と呼び、10年を超えるものを超長期債と呼ぶのが一般的です。
現在これに属する国債は期間20年、30年として発行されている超長期国債です。
以上の3種類の国債が、日本で発行されている国債のほとんどを占めます。
これを発行する政府の立場から言えば、現在のように超の字がつく低金利時代にはできるだけ期間の長い固定金利型の債券を多く発行すると、将来にわたって利子の支払いが少なくて済むという思惑が働きます。
実際、2010年台後半からは超長期国債の発行額が多くなる傾向にあります。
期間10年の変動金利型個人向け国債
国債発行条件の多様化、個人消化の促進を狙って2003年3月に第1回債の発行が行われたのがこれです。
当初は、3カ月に一度のペース でしたが、現在は毎月発行されています。文字通り、個人だけしか購入できません。
この国債の最大のポイントは、固定金利ではなく半年ごとの「変動金利」を採用したことです。
半年ごとに支払われる利子は、そのときどきの10年長期国債発行利回りを基準利率と定め、これに、0.66%をかけた水準で決定されます。ただし計算上、0.05%未満になった場合でも最低0.05%の利子は保証されます。
1年経過すれば、過去2期(1年)分の利子相当額を手数料相当分として支払えば、いつでも換金できる(発行者である国が額面で買い取ってくれる)という点もそれまでの債券にはなかった点です。
つまり、途中での利回りならびに価格変動を気にする必要がないのです(ほかの多くの債券は、換金するにあたってはその時々の時価で売却することになる)。
固定金利3年物・5年物の個人向け国債
個人向け国債には10年変動金利型のほかに、クーポンが一切変化しない(固定されている)固定金利型の国債が2種類あります。期間3年物と5年物です。
10年変動金利型個人向け国債と同じく、毎月募集・発行されてい ます。募集期間も原則として同じです。中途解約に際しては国が買い取るという点も、変動金利型個人向け国債と同じです。
購入金額も変動金利型個人向け国債と同じく、額面1万円単位。利払いは年2回(半年ごと)です。
地方債
国が財政資金の調達のために国債を発行するのと同様に、都道府県・市町村といった地方公共団体も、税収不足を埋めるために債券を発行しています。これを地方債と呼びます。
地方債のなかには、広く一般に販売すべく発行されるもの(公募地方債)と、特定の銀行や企業によって引き受けてもらうもの(非公募地方債)があります。個人が買えるのは前者です。
地方債は、長期国債と同様、原則として定められた募集期間内であれば、新発債として買い求めることができます。
国債とは異なり、各自治体によって発行年限が相当異なります。また、同じ発行者であっても発行時期によって年限がバラバラ、もちろんクーポンや発行価格なども異なります。
一般には、同時期に発行される年限が同じ国債に比べると、若干高い利回りで発行されます。
政府系機関が発行する特別債
政府系金融機関など特別な法律に基づいて設立されている法人が発行する債券を、特別債あるいは政府関係機関債と呼びます。
国の監督権が及ぶ特殊法人が発行するという、高い信用力に裏付けられた債券です。国債、地方債に準じる位置にあり、これを含めて「公共債」と呼ぶことが一般的です。
大別すると3つのタイプがあります。1つ目は、元利金の支払いに政府の保証が付く「政府保証債」です。
2つ目は、政府保証が付かず、発行者と特別な関係にある金融機関等に対して発行される「私募特別債」があります。
さらに3つ目には、政府保証が付かないが一般に公募の形で発行される債券があります。これを「財投機関債」と呼びます。
インフレ率いかんで元本が変動する物価連動債
2013年度から、日本では物価連動国債というちょっと変わった仕組みの国債が発行されています。
通常の債券との大きな違いは、元本部分が消費者物価指数に連動して変化するという仕組みがとられていることです。
すなわち、インフレ率が高まればそれに応じて元本部分が増価し、インフレにある程度対応できるという仕掛けになっているのです。このため別名「インフレ連動債」と呼ばれることもあります。
変動金利型国債とは異なり、毎年支払われる利子を決める表面利率(クーポン)は途中で変化するわけではありません。ただし、元本部分はインフレ率に応じて変動するため、クーポンが一定であっても支払利子額は変動します。
もっぱら法人投資家による取得が想定されていましたが、2015年からは個人でも買えるようになりまし た。
この国債は、市場参加者のインフレ予想値を測るために用いられることがあります。
つまり、一般の10年固定金利型国債 との利回り差を追っていくことで、その時々の市場でのインフレ予想値を読み取ることができるのです。
なぜかというと、市場参加者の間でインフレ期待度が高まると、この物価連動型国債の人気が高まって価格が上昇、利回りが低下するため、固定金利型国債との利回り差が拡大するからです。