
近年、プライベート投資は、多くの投資家によって受け入れられています。
投資家アンケートにおいても、今後配分を増やしていきたい投資戦略として、毎年プライベート投資が上位に挙げられており、実際、投資家のポートフォリオ全体に占めるプライベート投資への配分割合も増加傾向にあります。
プライベート投資戦略の概要
プライベート投資戦略は、2000年頃より著しい成長を遂げてきました。
しかしながら、その間の投資環境を振り返ると、2000年のITバブル崩壊から始まり、2008年のグローバル金融危機、2011年の欧州ソブリン危機、2014〜2015年の原油価格危機といった、数々の危機を経ています。
プライベート投資は、これら厳しい投資環境を乗り越えて、「成長」を持続してきたといえるのです。
また、成長を続けてきた理由として、伝統的運用手法のみでは得られない「特性」、分散効果などの「魅力」がプライベート投資には存在していることも考えられます。
しかし、プライベート投資には、低流動性などのデメリットも存在しており、この点についても、実際の投資を進めるにあたっては十分に理解することが必要となります。
著しい成長を遂げてきたプライベート投資
プライベート投資の成長は、その「量的成長」に注目されがちですが、特に2008年のグローバル金融危機以降、それまでの教訓を生かす形で「質的成長」も同時に図られてきました。
つまり、「質的成長」があったからこそ「量的成長」が達成されてきたともいえるのです。
プライベート投資に対する投資需要は、引き続き底堅く推移し、今後も「量的成長」と「質的成長」 がバランスをとりながらプライベート投資の成長は続くことでしょう。
プライベート投資の量的成長
プライベート投資は、一貫して規模の拡大を続けています。
特にプライベートエクイティとヘッジファンドが最大規模ではあるものの、不動産、インフラストラクチャー、プライベートデット、天然資源についても規模を拡大させており、東京証券取引所の株式時価総額に匹敵する規模になっています。
投資家がプライベート投資を行う最大の理由は分散効果です。
投資家は伝統的運用に対する分散効果や、プライベート投資戦略内での分散効果を求めて、プライベート投資への配分を増やすことが予想されることから、拡大と戦略の多様化は今後も続くと思われます。
プライベート投資の質的成長
主な質的成長としては、リスク管理と情報開示が挙げられます。
グローバル金融危機での経験を踏まえ、運用者はリスク管理を厳格化し、投資家から一任運用や投資助言サービスなどを請け負うアドバイザーは顧客へのサービスとしてリスク分析を推進し、また投資家においてもリスクの把握を強化してきました。
また、その動きに伴い運用者に対する情報開示の期待も高まり、単にファンド全体の表面的なパフォーマンスだけではなく、組入れ資産の詳細や、ポートフォリオ全体の分散状況、流動性、資金調達先や返済期限の分散状況に至るまで、詳細な情報の開示が求められています。
投資家およびアドバイザーは、それらの情報をベースにデューデリジェンスおよび投資後のモニタリングを行いますが、十分なリスク管理と情報開示を行わない運用者は、投資家からの資金を集めることができずに淘汰されており、それに応えられる運用者のみが生き残る構図となってきています。
つまり、運用者はもちろんのこと、投資家やアドバイザーを含めた参加者全員の経験、努力、 英知によって質的成長が図られてきました。
グローバル投資家の投資計画
国内年金によるプライベート投資比率は13%程度と推定されていますが、近年では増加傾向にあります。
グローバル投資家においても同様であり、プレキン社の実施したアンケート調査によれば、その取組割合は以下の表のとおりとなっており、足元では22%程度をプライベート投資に配分していると推計されます。
戦略別でみると、プライベートエクイティ、不動産、ヘッジファンドの割合および配分割合が高く、これらの戦略がプライベート投資の中では投資家に受け入れられています。
一方、インフラストラクチャーとプライベートデットについては、相対的に取組割合および配分割合が低くなっており、これらの戦略は投資家にとっても比較的新しいエリアとなっています。
なお、投資家の長期配分計画をみると、すべての戦略において配分増加が配分減少を上回っており、引き続き、プライベート投資に対する旺盛な投資意欲が確認できます。