
個人投資家のなかには、「エンジェル投資をしてみたい」、「興味があるけど不安」、「なかなか手を出せないでいる」という思いを抱えている方が多いです。
エンジェル投資は儲かる投資だとかいう華々しい話が多いですが、エンジェル投資もあくまで「投資」なのでリスクがあります。
今回はそのエンジェル投資、スタートアップ投資のメリット・デメリットを簡単にまとめてみました。
エンジェル投資の魅力とは?
エンジェル投資の魅力を3つ挙げるとすれば、投資によって大きなリターンが得られる可能性があること、スタートアップを応援できること、税金の優遇があること、この3点が魅力でありメリットと言えます。順に説明していきます。
メリット①ハイリターンが得られる可能性
エンジェル投資の最大のメリットは金銭的なリターンであり、これを目的に投資をしている方がやはり多いと感じます。
通常の株式投資であれば、買ってから株価が2倍になれば十分、株価が10倍になるテンバガーに巡り合う機会はそうはありません。
ところが、スタートアップは上場企業に比べて投資時の事業規模が小さいぶん、大きな成長が期待できます。
たとえば、1億円の売り上げを10億円にするよりも、1,000万円を1億円にするほうが、同じ10倍でも簡単だということです。
これと同じくスタートアップのほうが大きく成長しやすいからこそ、スタートアップ投資では10倍、20倍といったリターンを狙うことができます。
VC(ベンチャーキャピタル)がアーリー期のスタートアップに投資する場合も、10倍程度のリターンを求めるのが一般的です。イグジットまでの期間はそれぞれでしょうが、IPOの場合は実施するまでにはどんなに短くとも4、5年はかかります。
メリット②スタートアップを応援できる
エンジェル投資には、金銭的なリターンを得るだけではなく、投資を通じてスタートアップを「応援する」といった意味合いもあります。
多くの起業家は「イノベーションで世の中を変えたい」、「世の中の役に立ちたい」と考えていて、その理念に共感した支援者がサポーターになるような気持ちで投資をするのです。
たとえば、生活に不便だと感じるものにそれを解決するようなサービスを提供しているスタートアップに投資したり、小さな子どもを持つ人が子どもの安全を守るための商品を開発しているスタートアップ に投資したりするといったことです。
多少リスクが高くても、「これが解決するなら」とお金を出す人はいます。なかには、そのビジネスが大成功して会社が大きく成長し、日本経済に貢献する超大手企業になることもあるかもしれません。
そんな、未来の有望株を誰よりも早く見つけたり、世間が認めていないうちから投資をするロマンや優越感も味わえます。
メリット③税金の優遇が受けられる
スタートアップに投資すると「エンジェル税制」 が適用される場合があります。
エンジェル税制とは、スタートアップ企業に出資した投資家に対して税制上の優遇措置を与える制度のことで、投資額のほとんどが所得から控除されるなど、手厚い内容となっています。
スタートアップへの投資が増えることで国の経済や産業を発展させられると政府が考えているがゆえの政策です。
より多くの人が利用できるよう、税制上のメリットを与えるのは当然のことかもしれません。
(関連記事:エンジェル投資とエンジェル税制)
あくまで投資なのでリスクもある
魅力やメリットだけではありません。エンジェル投資にはリスクもあります。
それは、元本割れする可能性があること、自由な売買がしづらいこと、投資判断が難しいことです。
デメリット①元本割れのリスク
投資した金額よりも少なくなる元本割れは、株式投資における大きなリスクです。
特にスタートアップ企業への投資は成功すれば大きいですが、ビジネスが世間に受け入れられないと業績が伸びずに停滞したり、最悪の場合は倒産・解散する可能性もあります。
エンジェル投資で得た未上場株を売却できるのは、現状ではIPOやM&Aをした場合が主ですから、そのままだと誰かに売って利益を確定することはできず、企業自体がなくなると保有している株は紙くずになる場合があります。
1社当たりの投資金額を低く抑えたとしても、スタートアップへの投資はハイリスク・ハイリターンと言えます。
デメリット②自由な売買がしづらい
上場株であれば利益確定や損切りで現金化し、次の株を買うことができますが、未上場株は自由に売買できません。
そもそも上場株のようにマーケットが開かれていませんし、一般的に未上場株には譲渡制限が設けられているからです。
支援者がほかの人に株式を渡そうにも、取締役会や株主総会で承認を得る必要があるのです。企業にしてみれば自由に売買できてしまうと株主の管理ができなくなりますし、反社会的勢力の手に渡るリスクを避けたいという理由もあります。
基本的にはIPOやM&Aをするまで持ち続けると考えたほうが良いです。
この自由な売買ができないことが、未上場株への資金流入が増えない原因になっているという指摘は前々からあり、その問題の解消に向けた対策が考えられています。
つまり、未上場株を買ったあとに自由に売買できる市場(セカンダリー市場)を作ろうという動きがあります。
アメリカのように、未上場株式を売買できる市場が確立されると、未上場株への投資はもっと活性化するでしょう。
一日も早いインフラ整備とその定着が望まれます。
デメリット③投資判断が難しい
未上場株は投資判断が難しいことも事実です。
企業が上場する場合は監査法人による監査を受けたうえで、有価証券届出書を提出し、募集を行います。また、証券取引所や証券会社の審査をクリアしたうえ上場しているので安心感がありますが、未上場企業にはそれがありません。
また、上場株は有価証券報告書などIR情報を公表していますが、未上場株は公表の義務がなく資料も十分ではありません。
未上場株への投資はそれなりのリスクがあるので、どこで情報を開示し、投資家にリスクを周知するのかが課題になっています。この点も注意が必要でしょう。