
投資型クラウドファンディングの問い合わせが増えています。
投資型クラウドファンディングには「融資型」と「株式型」がありますが、エンジェル投資を気軽にできるのが「株式型クラウドファンディング」です。
今回はその株式型クラウドファンディングの概要と欧米の実例をお伝えします。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数から資金提供を募り、調達する手法です。「群衆 (クラウド) と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語です。
クラウドファンディングはアメリカで生まれた制度です。2001年に世界初のサービス、「ArtistShare」が誕生し、2008年にスタートした「Indiegogo」や「Kickstarter」では、巨額のプロジェクトが続々と成立しています。
日本では2011年にクリエイティブ系に強い「MOTION GALLERY」や社会性が高く公共的な取り組みが目立つ「READYFOR」、オールジャンルの「CAMPFIRE」が始まり、この年が国内におけるクラウドファンディング元年となりました。
(関連記事:クラウドファンディングの5つのタイプ:投資に適しているのは?)
株式型クラウドファンディング
株式型クラウドファンディングとは、スタートアップを中心に企業が実施する資金調達の手段で、未上場株の提供を条件に個人投資家から資金を募るクラウドファンディングです。
これまで、未上場株への投資はVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家のみに開かれていましたが、株式型クラウドファンディングの登場により個人がインターネット上でできるようになりました。
リターンはモノ・サービスや金銭ではなく、投資先の株式です。
投資した時点で利益はありませんが、その企業が将来IPOやM&Aによりイグジットすると大きなリターンが期待できます。
融資型はリターンの確実性が重視されますが、株式型は会社の成長性を重視します。うまくいけば経済的なリターンもありますが、その企業の理念に共感しているなど、企業のサポーターになるという側面もあります。
(関連記事:融資型クラウドファンディングの5つのメリットと3つのリスク)
企業が株式型クラウドファンディングで資金調達したいと考えた場合は、プラットフォーマーに審査を申し込みます。
審査を終えて、必要な条件をクリアしていたら、サイト上に情報が公開されます。投資家は公開された情報を参考に投資をするかどうか判断します。
ただし、制約があります。企業は株式型クラウドファンディングを通して年間1億円未満の資金調達しかできず、投資家は1社につき年間50万円までしか投資できません。
プラットフォームとしては、最大手の「FUNDINNO」や「CAMPFIRE Angels」などがあり、参入企業も増え続けています。これらのプラットフォーマーには金融庁に登録が必要な資格が求められます。
欧米の成功例
日本では、株式型クラウドファンディングのサービスが始まって歴史が浅く、欧米に比べると制度の施行や環境整備が遅れています。
たとえばアメリカの場合、中小企業やスタートアップの資金調達を促すため、オバマ政権下の2012年4月にJOBS(The Jumpstart Our Business Startups)法が制定されました。
これを受けて、2016年5月からアメリカで株式型クラウドファンディングが始まっていて、市場は急拡大しています。
エンジェル投資家やVCによる資金調達が浸透しているアメリカにおいても、かなりのニーズがあります。
プラットフォーマーとしては、「WeFunder」 や「StartEngine」などが有名で、StartEngineはセカンダリーマーケットも運営しています。
そして、株式型クラウドファンディングが最も盛んなのはイギリスです。
イギリスでは、株式型クラウドファンディングを通じて資金調達をしたスタートアップのなかからユニコーン企業が出てきており、IPOを実施した事例も複数あります。
シード期およびベンチャー企業へのVCからの出資額と株式型クラウドファンディングを通じた調達額を比較すると、2012年から株式型クラウドファンディングの規模が急速に拡大し、2016年にはVCと肩を並べるほどの規模になっています。
IPOを実施して投資家が大きなリターンを得たことで、イギリスではこのスキームが急速に普及しました。
いまはIPO事例のない日本も、同じ経緯をたどるかもしれません。
大きなリターンを得た投資家が現れると、一気に普及することが考えられます。
各国の制度の違い
株式型クラウドファンディングのルールは各国で異なり、アメリカは同制度を使い企業が資金を調達する場合、年間500万ドルまで募集することができ、投資家は年収や純資産に応じて年2,200ドル〜10万7,000ドルの出資が可能です。
アメリカと同じく株式型クラウドファンディングが広く浸透するイギリスは、目論見書を作成すると年間調達に上限はなく、投資上限額もプロ投資家やVC、一定の要件を満たした個人は上限がありません。
どちらも日本より調達額、投資額両方ともに大きいのが特徴です。アメリカやイギリスと日本の制度を比較すると、下の表のようになります。
日本でも株式型クラウドファンディングは市場規模が拡大しているものの、欧米には遠く及びません。
より多くの企業をユニコーンに育てたり、IPOやバイアウトといったイグジットを実現するためには、資金調達金額や投資上限金額の緩和、セカンダリーマーケットの市場整備などが急務です。