
一言で「ヘッジファンド」と言っても、投資手法や投資スタイルはファンドごとに大きく異なります。
大きなリスクを取ってリターンを狙うものもあれば、リスクをいかに減らして安定的な収益を求めるものまで多種多様です。
とはいえ、基本となる戦略はいくつかに分けられ、今回はそのヘッジファンドの戦略の中で最もメジャーな4つの戦略についてお伝えします。
1.ロング・ショート戦略
株式の買持ち(ロング) と売持ち(ショート) を組み合わせることで、インデックスの上昇・下落にかかわらず、収益をあげるチャンスを低リスクで得る手法です。
実際には右肩上がりの市場では、株式の上昇によるリターンが大きく、売りには株式の借入れコストなどがかかることから、多くの運用者は買持ちに偏るポートフォリオを運用する傾向があります。
手法は以下の例のように細分化される傾向があります。
- 地域別(日本株特化など)
- サイズ特化(中小型株特化など)
- セクター(バイオ業種特化など)
- トレーディング型(高回転率など)
- 銘柄集中投資
買い銘柄が下落し、売り銘柄が上昇する場合に当然損失が発生することになりますが、過度なレバレッジをかけている場合や、買い、売りの銘柄の間に流動性のミスマッチがある場合には、想定以上の損失が生じる可能性もあります。
2.マーケット・ニュートラル戦略
ファンダメンタルズや価格の動向について、統計的な手法 (モデル)を用いて株式の売り買いを同額だけ行う手法です。
取引は、事前にモデル化された手法に従うため、原則、運用者の恣意が反映することはモデル変更以外にはありません。
組入れ銘柄数は一般的なロング・ショート戦略よりもかなり多くなる傾向があります(200〜6,000銘柄)。
パフォーマンスは、市場の上下には左右されず、株式市場のゆがみに着目し、財務情報や業績修正、企業規模などの違いによる株価の動きに連動しやすいという特徴があります。
市場規模に対して過大となる同戦略の運用資産が類似の収益機会を追い求めた場合(いわゆる混み合った状態)、一部の運用者の撤退などがきっかけとなり、同種戦略が長期にわたり逆回転することで、損失が大きく膨らむこともあります。
3.グローバル・マクロ戦略
金融先物、商品先物、為替、株式、金利関連商品ほか、流動性の高い金融商品を中心にマクロ環境に即した取引を行う手法です。
市場に対する運用者の見方を反映させたポジションをとることが多く、「個別のテーマ」に集中して収益をあげるタイプの戦略が難しくなるなか、複数の「優秀なトレーダー」が継続的に収益をあげることが主流になりつつあります。
一つのテーマに過大なリスクをとることがあり、見方が外れた場合には大幅な損失を計上する可能性もあります。
機関投資家でも、ましてや個人投資家では大物運用者の運用するファンドに直接投資をすることは不可能に近いです。ある程度成功し、快適な運用資産規模に達した運用者は、通常外部からのファンド募集は行わなくなるからです。
もちろん、有名かつ大規模なヘッジファンドの運用成績が常に良好なわけではなく、むしろ小中規模ファンド運用会社のなかに、より高い運用成績を出すものも存在します。
4.イベントドリブン戦略
株式への投資が一般的ですが、社債やローンを投資対象とすることもあります。戦略の特徴としては、個別企業の各種「イベント」を投資機会とする投資戦略です。
代表的な企業イベントは、合併・買収、事業再編、主な株主の変更、決算発表、当企業の株価インデックスへの組入れなどで、ほかにも企業の株価に影響を与えるとみられる事象が含まれます。
一般的には、ファンドは客観的な立場からいち早くコーポレートアクションを把握、評価する必要がある一方、必ずしも長期投資である必要もありません。
投資対象銘柄の流動性が低いことが多いため、ファンドレベルで解約に時間がかかる傾向にあります。また、アクティビスト型の場合、投資対象企業の経営陣との対立に発展する可能性もあるため、訴訟、信用リスク等があります。