
投資詐欺が増えているということは以前の記事でお伝えしましたが、投資詐欺で騙されているのは個人投資家だけではありません。
プロの投資家=機関投資家(金融機関や年金基金等)も騙された事件も発生しています。件数としては多くありませんが、今回はその代表的な例をお伝えします。
マドフ事件
発生している投資詐欺の大半は個人投資家が騙されるケースですが、なかには機関投資家のようなプロの投資家が騙されたケースもあります。その代表例がマドフ事件です。
2008年末にナスダック取引所の会長を務めた経歴をもつ、バーナード・マドフが運営する運用会社のネズミ講による詐欺事件が表面化し、約100億ドルともいわれる被害が投資家に生じました。
これは、マドフが著名な投資家であったこと、多くの大手金融機関が投資していたこと等により世界中のプロ投資家が騙されています。日本国内だと大手のほぼ全ての証券会社と銀行もこのファンドに出資をしていました。
金融危機とマドフ事件により、投資家のヘッジファンドに対する投資の速度は鈍化し、また、選別の目はますます厳しくなりました。
AIJ事件
2012年には日本でもAIJ事件が起きました。総合型年金基金を中心に2,000億円近い資金を運用していたファンドは、投資家に虚偽の運用報告を行っており、実態はほとんどの資金を運用で失っていたことが明らかになっています。
マドフ事件と AIJ事件の大きな違いは、マドフが資金を集める際に投資家に説明していた運用はいっさい行われておらず、資金募集当時から投資家に対して虚偽報告を行っていました。したがってマドフ関係者による使い込み以外の資金は保全されていました。
これに対して、AIJでは、当初実際に運用が行われた結果、多額の損失が生じた後に虚偽報告を開始したとみられており、その後も運用による損失を繰り返したことから、投資家資産の大半が消失していたものとみられています。
プリンストン債事件
機関投資家が騙された事件に、プリンストン・グローバル・ファンドの事件もあります。プリンストン債ということで債券のような印象ですが、実際は投資ファンドでした。
当時の事件を振り返ると、日本では、クレスベール証券(2004年に破産宣告)という外資系証券会社がプリンストン債を「過去8年の実績は年25%の利回り」と高利回りをアピールし、「トリプルA格の債券で運用」と安全性を強調して、日本企業76社に総額1,300億円以上を販売しました。
しかし、実際は極端なリスクをとる運用で、たとえば米国株式を空売りして金の先物を購入するような取引を行っていた模様です。その思惑に反して金の価格が下落し、5億ドル以上の損失を出し、プリンストン債はデフォルト(償還不能)になってしまいました。
結果として多くの日本企業が損失計上を余儀なくされて、世にいう「プリンストン債事件」として1999年頃に世間を騒がせました。こうした日本企業のなかに は、上場企業や店頭公開企業や金融機関も含まれていたと言われています。
購入前の確認で回避可能
個人投資家のようにリソースの少ない投資家の場合、 こういった詐欺を見分けるにはどうすればよいのでしょうか。
①ライセンス確認
簡単にできることとしては、販売する相手が金融庁に登録をしているかどうかを確認することです。
登録業者であれば、金融庁のホームページに掲載されています。金融商品取引法によって、 ファンドや金融商品を販売をする者は、一部の例外を除いて、原則として登録が義務づけられているからです。
②利回り水準
また、もし、その投資ファンドが利回りを保証していて、その利回り水準が、その通貨の金利と比べて高かったら、詐欺の可能性が高いと疑ってかかったほうがよいでしょう。
通貨ごとに金利水準が異なるので、たとえば、米ドルの金利が2%で円の金利が0.5%だとしたら、米ドル建ての投資ファンドで1.5%の利回り保証は考えられる水準ですが、円建てで1.5%の利回り保証をしていたらちょっと怪しいです。
その通貨の金利水準以上に儲けるためには、なんらかのリスクをとらなければ理論的に考えて不可能です。「ノーリスク・ノーリターン」であることを覚えておいてください。当然、リスクをとれば失敗した場合に損失を出す可能性があります。
③誰が利回り保証?
さらにいえば、「保証」という言葉にも気をつける必要があります。大事なのは「保証」の有無ではなく、「だれが」保証しているかということです。
たくさんの投資ファンドを運用している運用会社が保証しているのと、その投資ファンドしか運用していない運用会社が保証するのとではまったく異なります。
後者の場合だと、運用会社は高い利回りを一応「保証」するのだが、実際の運用はリスクをとって行い、もし失敗したらその会社を倒産させてしまえば済む話です。
これだと、投資家からみると保証されていても元本は返ってこないので、実質的には保証されていないのと同じです。
これに対して前者のようにたくさんの投資ファンドを運用している会社であれば、会社倒産のリスクはより小さいので、保証の確度は高まるでしょう。
④直接確認の手も
また、もし、ある未公開株だけに投資するファンドへ投資するのであれば、実際にその会社へ電話をして公開予定の有無を確認したり、業績や財務内容や株価をすでに上場している同業他社と比較して、業者の示す価格が妥当であるかどうか見極める必要があるでしょう。