
プライベートファンド(私募で募集されるヘッジファンドや投資ファンド等)に投資を検討する場合、通常の投資信託などとは違う点に目を付けることが大切です。
もちろん、過去のパフォーマンスや投資対象などが最も重要ですが、そのような数値で表すことの難しい要素もあります。
今回は、プライベートファンドに投資する際に重要なポイントを整理しておきます。
1.投資哲学
まず、定性的な部分で最も重要なのはそのファンドの投資哲学です。この投資哲学は各投資ファンドによって異なりますが、企業でいえば企業理念のようなものであり、ファンド運営の根幹をなすものです。
たとえば、「投資家と投資先企業の共存共栄」のようなWin-Winを目指している投資ファンドもあるでしょうし、別の考えをもつ投資ファンドもあるでしょう。
したがって、まずそのファンドの投資哲学を確認して、自身の考えと比べて齟齬がないか考えるべきです。
2.ファンドの運用担当者
ファンドの運用担当者がどのようなバックグラウンドの持ち主か、また、どのような考えの持ち主かを確認します。
特に名前や顔をちゃんと出しているかが重要です。また、そのファンドが何社に出資していてファンドの運用担当者が何人いるかを確認することで、一人当り何社をフォローしているかが見えてきます。
3.企業に対する考え方
「会社は誰のものか」という議論があります。会社には、その企業を取り巻くさまざまな多様化したステークホルダーが存在します。
これらのステークホルダーには、たとえば顧客、仕入先、債権者、従業員、経営陣、地域社会、などが該当します。このステークホルダー間のどこにどの程度の重要性を持っているか、またどの程度の時間軸でそれを実現していくかについては、投資ファンドごとに考えが異なるものです。
4.ファンドの出資者
ファンドへの資金提供者も重要な要素です。ファンドへの資金提供者が年金基金や金融機関である場合、比較的長期にファンドへ資金を提供してくれている場合が多いと思われます。
一方で、個人が主体の場合、比較的短期間でファンドを売却されてしまうリスクがあります。短期志向の資金提供者が多いファンドだと、投資ファンド自身は長期運用を志向していても、投資ファンドの資金提供者の事情からファンドが解約になり、投資先企業の株式を売却しなければならなくなるといったようなリスクも生じます。
5.ファンド運用会社の株主構成
投資ファンドの運用会社の株主も重要です。投資ファンドは大別すると、
- 国内大手企業の子会社
- 国内独立系
- 外資系
に分けることができます。
①国内大手企業の子会社の場合は、経営は安定しているというメリットがありますが、デメリットとして転勤等による担当の入替えやサラリーマン志向でのリスクを取らない運用になる可能性があります。
②国内独立系の場合は、そうしたデメリットはありませんが、大手企業子会社に比べて経営基盤が磐石でない可能性もあります。
③外資系の場合は、時として英語での対話が必要になる可能性があり、コミュニケーションがスムーズにいかなかったり、日本の事情に精通していないファンドの場合、意思決定に時間がかかったりするリスクがあります。
6.出資比率
ファンド選択基準のなかで最も影響が大きい出資比率でみると、50%超の株式を取得して経営権を掌握する支配型投資か、そうでない非支配型かという二つに分かれます。
一般的に、バイアウトファンドや再生ファンドなどの投資ファンドは、株主50%超のいわゆる経営権を要求する支配型であることがほとんどです。
これに対して、ベンチャーキャピタルファンドやアクティビストファンドは、これを要求しない非支配型であることがほとんどです。
7.企業のステージによる違い
企業がまだ創業間もないベンチャー企業であれば、ベンチャーキャピタルファンドに出資を求めます。もし、ある程度の規模になっていてさらなる成長を目指すような場合はアクティビストファンドやバイアウトファンドが、またなんらかの要因で一時的に事業が不振に陥り、大幅な再生を図る必要がある場合は、事業再生ファンドが適しています。
同じお金なのになぜ違うかというと、それぞれの投資ファンドが得意とする投資領域があるからです。したがって、自分の投資資金とスタイルを考えて投資ファンドを選択するべきです。
8.投資先のガバナンスへの関与
ファンドによってガバナンスの方法は異なります。大別すると、発言型や、支配型か非支配型かという分類に分けることができます。
ファンドのスタイルがこのうちのどれに該当するか、関与の程度はどの程度なのかということは事前に確認するべきでしょう。
9.目標リターン
ファンドが目指している目標リターンは確認しておいたほうがよいです。投資ファンドのリターンは投資先企業の次の四つの要素からしか生じません。
- 企業の業績拡大(売上成長やコストカットなど)
- キャッシュフローの改善
- 株式市場での価値の上昇
- 負債返済による財務レバレッジ効果
10.投資比率
ファンドによって投資先1社当たりの投資金額の割合の上限が決まっています。それにより、そのファンドが集中投資をするのか分散投資をするのか、分散するとしたら何社くらいに分散するのか、がわかります。
あまり集中しすぎてもリスク過大になりやすいですし、何百社に分散するようだとインデックス投資や投資信託と変わらないリターンしか得ることはできません。
11.投資期間と出口戦略
ファンドである以上、いつかは現金化してファンドの資金提供者に資金を返還する必要があります。
したがって、投資家はファンドの残存期間などを調べて、どの程度の期間でファンドが株式を売却する可能性があるかということを考えておく必要があります。
自身の投資資金がどの程度の期間投資するものなのか、解約やその際の手数料などもよく確認しておきましょう。
公募型の投資信託とは違い、私募型のファンドを選択するポイントは異なる点が多いです。
投資家がプライベートファンドを選択する場合、ここであげたチェックポイントを事前に確認し、投資家とファンドがお互い十分にニーズや考えを理解し合い、双方のニーズの合致する出会いをつくれるならば、 Win-Winの関係になることができるはずです。