
バイアウトファンドとは
バイアウトファンドは、投資先企業の過半数超の株式を取得することにより、投資先企業を買収します。そして、投資先企業の企業価値向上を図り、数年後にキャピタルゲインを得るために株式を売却するといった投資をするファンドです。
過半数を取得するという点において、ベンチャーキャピタルやアクティビストファンドと異なります。また、投資対象が成熟企業か、衰退企業かという点で、同じように過半数以上の株式取得を目指す再生ファンドとも異なっています。
バイアウトファンドの成り立ち
米国でバイアウトファンドが登場したのは、1970年代後半といわれています。有名なファンドとしては、KKR (Kohlberg Kravis Roberts) があげられます。
日本においてバイアウトファンドが誕生したのは、1990年代後半のことで、独立系のファンドとしては、1997年にアドバンテッジパートナーズが、続いて1999年にユニゾン・キャピタルがファンド組成を行いました。
その後、ジャフコ、みずほキャピタルパトナーズなどの大手金融機関系ファンドやカーライル・グループなどの外資系ファンドがバイアウトファンドを組成し、バイアウトファンド市場が国内でも形成されてきました。
バイアウトファンドの投資方法
バイアウトファンドは、通常、コミットメント(払込)契約というかたちで投資家から資金を集めます。
コミットメントとは、法的拘束力をもった投資枠のことで、ファンドと投資家の間で、あらかじめ定められた金額や期間などの条件において、投資家は、投資案件等が発生する都度、コミットメントの範囲内の金額で投資案件へ投資資金を拠出する義務を負います。
逆にいうと、投資案件等が発生するまでは、投資家は資金を拠出する必要はありません。
バイアウトファンドの投資対象
バイアウトファンドが投資対象にする会社は、一般にキャッシュフローが比較的安定している企業で、ある程度成熟した企業であることがほとんどです。
したがって、創業間もないベンチャー企業など成熟度の低い企業へ投資を行うことは非常にまれです。そうしたある程度成熟した企業に対して、新たな経営の選択肢を提示して、株式価値を再成長させることを目指していくことになります。
バイアウトファンドが提供できる付加価値には、成長のための資金、補強すべき人材、必要な提携パートナーを探してくることなどが含まれます。
企業経営者は、バイアウトファンドを利用して、これまでは社内の抵抗勢力の影響で実行できなかった改革を加速したり、外部との提携を加速させたりすることができるようにもなります。
事業会社との共同投資
バイアウトファンドが単独で買収するものだけでなく、事業会社と共同で投資する案件も多くあります。
たとえば、ユニゾン・キャピタルは東ハトのバイアウトをする際に、バンダイと丸紅と一緒になって投資を行いました。また、東京海上キャピタルが、伊勢丹から同社の100%子会社であるバーニーズジャパンを買収する際は、住友商事と共同で買収を行っています。
事業会社と共同で投資を行うメリットは、バイアウトファンドにとっては、事業会社の有するその事業運営ノウハウや販売経路の活用、共同仕入れなどを行うことで、シナジーや収益性の改善をより効果的に行うことができることでしょう。
半面、デメリットとして、将来の売却先が限定されるリスクがあります。
一方の事業会社にとってのメリットとしては、バイアウトファンドの持つ戦略立案能力や最新の金融の活用、規律のあるコーポレート・ガバナンスの運営手法を生かすことで、より効果的に株式価値向上を図ることができるというわけです。
デメリットとしては、将来100% 株式を保有したい場合、追加資金が必要になることがあげられます。しかし、デメリットよりも、企業収益、株式価値向上のメリットのほうが大きいと考えられるので、事業会社とバイアウトファンドの共同投資案件も今後も増えていくと思われます。