
ファンド・オブ・ファンズとは
個別ファンドが数多くある中で、その各種ファンドを組み合わせたかたちの投資ファンドのことです。
総称して「ファンド・オブ・ファンズ」と呼ばれています。つまり、ファンドを組み合わせたファンドのことです。
ファンド・オブ・ファンズは、投資先の個別ファンドの選定、分析、アロケーションを行い、個別株式などの銘柄へは投資しません。
日本の公募投信型は微妙
日本で販売されているファンド・オブ・ファンズのなかには、公募投資信託を組み合わせた「ファンド・オブ・公募ファンド」のようなものも存在します。
ただし、公募ファンドは従来個々のファンドの情報をとりやすく、投資も容易であること、また株式ファンドだけの組み合わせでは相関が非常に高く、分散効果が限定的であることなどの理由から、ファンド・オブ・ファンズとしての価値には疑問があります。
一方で、ヘッジファンドなど、一般の投資家がアクセスすることが困難なファンドの選定や、相関の少ない戦略の組合せのポートフォリオを機動的に運用していくもの(ファンド・オブ・ヘッジファンズなど)には、戦略的な価値があると思います。
ファンド・オブ・ファンズのメリット
そのメリットを列挙すると以下の通りです。
- 一般の投資家からのアクセスが限られた投資対象(私募ファンドのため公開情報が少ない)への投資が可能。
- 投資の最低金額が1億〜10億円と多額なファンドに対する投資も、ファンド・オブ・ファンズを通すことによって分散投資が可能。
- ハイリターン・ハイリスクのファンドへ戦略的に分散投資することでハイリターン・ミドルリスクへの投資とすることが可能。
- 高いスキルをもつファンド・オブ・ファンズの運用者を選択することで、アセットアロケーションの効果も期待可能。
しかし、投資家は以上の効果を期待できる一方で、ファンド・オブ・ファンズの運用者に対しても手数料を払うことになるために、期待リターン自体はその分押し下げられるというデメリットもあります。
「ファンド・オブ・プライベートエクイティファンズ」
このメリットを特に享受できるのが、プライベートエクイティへ投資する「ファンド・オブ・プライベートエクイティファンズ」です。
世界的に著名なファンドである、KKR、カーライル・グ ループ、リップルウッドホールディングス、等のPEファンドは、どのような投資家の資金を運用しているのでしょうか。欧米では個人富裕者層からの投資が資金のかなりの部分を占めているものの、それらはほとんどがファンド・オブ・ファンズを経由して投資されるといわれているのです。
年金基金やその他の機関投資家ほどには多額の投資を行えない個人投資家で、たとえば1億円の資金をPE関連への投資に考えていたとします。
その際、最低投資金額が1億円のファンドであれば一つのPEファンドにしか投資ができず、結果として、そのファンドが投資する企業5〜10社程度にしか投資できないことになります。
これでは、その投資家にとって十分な分散効果は得られず、運用の成否はその1ファンドのみに依存することになってしまいます。
そこで、スキルの高いファンド・オブ・ファンズを経由することで、有名かつ高いトラックレコードを有するファンドに対して複数投資を行うことができるのです。
さらに、ファンド・オブ・ファンズは、投資対象となるPEファンド等のスタートする年も分けてポートフォリオに組み入れることによって、経済環境から生ずるリスクも合わせて低減させることもできます。
個人投資家もアクセス可能に
これまでファンド・オブ・ヘッジファンズやファンド・オブ・プライベートエクイティファンズは、ほとんどが機関投資家向けの商品でした。
しかし、ファンド・オブ・ファンズは、近年変化がみられるようになっています。オンライン証券会社を含めたいくつかの証券会社や銀行が個人向けの金融商品の品揃えの一環としてファンド・オブ・ヘッジファンズの販売を開始し始めています。
今後は、個人投資家のヘッジファンドやPEに対する投資の割合は増加していくものと思われます。
また、ヘッジファンド等のオルタナティブ資産と伝統的資産の垣根が低くなるなか、ヘッジファンド、プライ ベートエクイティファンドを従来の伝統的資産である株式投信や公社債投信と同じポートフォリオに含める、新種のファンド・オブ・ファンズも登場しています。
結果として、投資家はヘッジファン ド、PEファンドの双方の特性を一度に享受できるうえ、煩雑な資金管理をファンド・オブ・ファンズの運用者に任せることができるようになりました。
しかしまだ、このようなタイプの運用を行っているところはまだ数は少ないです。将来的にはこのようなハイブリッド型の金融商品の提供が増えるものと期待されます。