
最近ではCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が頻繁に作られています。そこから出資を受けている企業の場合、M&Aでのイグジットの可能性が高いです。
そんなCVCが投資している企業に自分もエンジェル投資をするということができれば、かなり面白い投資になります。今回はそのCVCについて簡単にご説明いたします。
CVCとは何か
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは簡単にいえば、大企業の会社内で設立されているファンドのことです。日本では今、CVCが乱立しており、ここ最近で私の調べた限り200程度のCVCがつくられています。
なぜ、CVCがどんどん設立されているのでしょうか?
その答えは企業の内部留保にあります。日本の企業は、ビジネスで得た利益を使わずに溜め込み、いざというときに備えようと考える傾向があります(内部留保のせいで株主還元や給料が上がらない要因とも言われていますが)。
たとえばトヨタ自動車が、1年間何も利益を生まなくても従業員全員の雇用を守ることができる内部留保があるという話は有名です。
このように、今の日本の大企業はかなりの利益を使わずに溜め込んでいます。経営者としては、内部留保があることで安心しますが、その会社に投資をしている株主は面白くありません。株主はできる限り利益を還元させて自分たちの収入にしたいので、利益を溜め込むことを良しとしません。
そこで、企業としては株主を納得させるために何か新しいビジネスを考えたいのですが、比較的参入しやすい投資ファンドビジネスに手を出すという流れになっています。
CVCを通じて、会社の本業の利益の相乗効果のあるベンチャー企業への投資を行います。投資手法としては、ベンチャーキャピタルや投資ファンドと同じですが、大きく異なる点は「資金の出どころ」です。
一般的なベンチャーキャピタルは外部から資金を集めてそれを運用しているのに対し、CVCの場合は資金はその親会社のものです。
つまり自己資金で投資しているファンドであり、意思決定も早いという特徴があります。
CVCからの出資を受けるとなぜM&Aが早まるのか
CVCが出資した会社に求めていることは2つあります。一つ目はその会社の長期的な成長です。もう一つはCVC本体の会社との相乗効果(シナジー)です。
普通のベンチャーキャピタルでは、投資先にIPOを求めているため、IPOするために多少の無理をしてでも急激に成長することを望んでいます。
CVCの場合は、最終的に会社とのシナジーが出ればそのまま自社に統合もしくはグループ会社化しようと考えているところが多いです。
つまり、IPOを目指させるのではなく自社でM&Aするのが目的です。そのため、出資先を無理に成長させるのではなく、今後シナジーが生まれるように長期的に成長していくことを要求します。
CVCが出資を決めてからM&Aされるまでの期間ですが、早くて半年程度、遅くとも2~3年以内には決着がつくことがほとんどなので、CVCが出資をした場合はエンジェル投資では何らかの成果が出やすいと言えます。
CVCが出資したのにうまくいかない場合
うまくいかないケースはCVCが利益の確保を急ぐような場合です。CVCの責任者も投資がうまくいかずに責任をとらされたくはないため、自分たちに有利な契約を結ばせようとすることもあります。
パターンは様々ですが、よくある例が利益を優先的に確保する契約です。簡単にいえば、出資をする代わりに会社の売上の半分をCVCに渡す、などといった契約です。
この契約に合意してしまうと、売上が減るだけでなく、将来にわたってCVCに搾取されるため、他の買い手が敬遠しますしバリュエーションも当然下がります。
結局M&Aの売り先がCVC以外になくなることになり、事業でCVCとのシナジーを出せなければ解散することにもなりかねません。
この手法が最近増え始めているので、自分の出資先の会社がCVCからの出資を考えている場合、エンジェル投資家は出資先の社長にきちんとデメリットを把握できているのかを確認する必要があります。