
人生は何が起こるかわかりません。万が一に備えて、保険をかけておくことは大切なことです。
例えば、自動車保険。事故に遭ったり、逆に自分が事故を起こしたりした時には多額の費用がかかる可能性があるため、かけておきたい保険です。
とはいうものの、その保険料はバカにはなりません。事故を起こさず保険金を受け取らなかったにも関わらず、保険更新のタイミングで保険料が上がるなんてこともあります。
このように、私たちからすると保険料の支払いは負担になりますが、保険を販売する保険会社からすると、いいビジネスだと言えるかもしれません。
なぜなら、事故はそれほど多発するものではありませんが、保険料は顧客からずっと受け取ることができるからです。このように、「おいしいビジネスモデル」とも言える保険。
実は私たち個人も投資をする上で、このビジネスモデルに類似した投資も行うことができるのです。それはどのようにするかと言えば、「オプション取引」を活用するのです。
オプション取引とは
オプションとは、「ある金融商品をあらかじめ定められた期日に事前に定めた価格で売買できる権利」のことを指します。
この説明だけだと、イメージが湧かないので、ある事例を使って説明しましょう。
例えば、オプションの一つにプットオプションと呼ばれるものがあります。これは自分が保有する株を自分が売りたい価格で売れる権利です。
仮にあなたが1株100円の株を持っていたとしましょう。今、市場が下落相場になっており、この企業の株価が下がる可能性があるとします。
そうなると、株価が下がって損を出してしまうのは嫌なので、プットオプションの出番です。
仮に「1株100円で株を売れる」プットオプションを持っていれば、どれだけ株価が下がろうとも100円で売却することができるのです。
つまり、プットオプションは「株価の下落保険」のようなものです。
ここでご紹介したケースはプットオプションを買うこと、つまり下落に対する保険を「購入」する場合でした。
売る権利を「売る」
一方、この下落保険を「売る」こともできます。保険会社のように保険料で稼ぐことができるということです。
では、どのような仕組みなのかをご説明します。
先ほどの例だとプットオプションを購入した人は「1株100円で売ることができる」という権利を手に入れたことになります。
ただ、もちろん保険を購入するためには保険料を支払う必要があるのと同様に、オプションの買い手は権利料(プレミアム)を支払います。
つまり、プットオプションを売る場合、プットオプションの買い手からこのプレミアムを受け取ることができるということです。
もし、株価が100円以下にならなかった場合、あなたは何もせずにプレミアムだけを受け取ることができます。
これは自動車保険でいうと、顧客が事故を起こさず(つまり保険金を支払わずに)、保険料だけを受け取ることができるようなものです。
極端な例にはなりますが、仮に株価が100円以下にならず、このプットオプションを売り続けたとしたら、ずっとプレミアムだけを受け取り続けることもできるということです。
仕組債は実質「オプションの売却」
この、「プットオプションの売却」つまり株を決められた価格で売ることのできる権利の売却を行う取引はEB債と言われる仕組債のもっとも中心的な役割を果たしています。
EB債の一般的な内容は、「参照銘柄が〇〇円以下になれば株券償還され損失が発生、〇〇円以下にならなければ満額償還され高い金利が受け取れる」といったものです。この〇〇円というのがノックイン価格に該当します。
例えば、現在100円のA株を参照、ノックイン価格50円、期間1年、利率10%という条件のEB債があるとします。
1年以内にA株が50円を下回った場合は満期時にA株での償還(株価は下落しているので損失)、50円を下回らなかった場合は額面での現金償還となります。
利率10%に当たる部分がオプション取引で受け取れるプレミアムに相当します。
仕組債(EB債)は賛否両論ありますが、通常の株式取引では得られない「プレミアム」を受け取ることができる保険のような取引の一種です。
EB債は、名前は「債券」ですが実質は「オプション」です。そのあたりのニュアンスがわかっていないと思わぬ損失を招いてしまうということがあるのです。
オプションは使い方次第
このように、私たち自身も保険会社のようなモデルを使って利益を狙うことができるのがオプション取引です。
オプション取引を実施する場合はリスクも知っておかなければいけませんが、うまく活用することで、着実に資産を増やしていくことも期待されます。
ただし使い方によっては、投資元本を上回る損失が出るような超ハイリスクになることもあるので、注意が必要です。