
「卵はひとつのカゴに盛るな」
卵をひとつのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合に全部の卵が割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちのひとつのカゴを落としカゴの卵が割れて駄目になっても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむという格言です。
ヘッジファンド業界では近年、規模が大きく、分散投資に長け、リスク管理に優れたマルチ戦略への投資に脚光が当たっています。
マルチ戦略ヘッジファンドとは
マルチ戦略とは、世界中の国・地域の株式、債券、為替、商品、指数など広範な投資先を対象に、ファンダメンタル株式ロング/ショート、グローバル・マクロ、イベント・ドリブン、リラティブ・バリュー、クオンツ、クレジット、アービトラージ、ボラティリティー・トレーディングといった様々な運用戦略を柔軟に組み合わせて安定的なパフォーマンスを目指す手法です。
つまり名前の通り、全ての金融商品を対象にさまざまな投資手法を行うファンドのことです。
新型コロナやロシア・ウクライナ情勢などの影響によりここ数年の金融市場は乱高下を繰り返しています。
また、それらを背景にしたインフレを抑制するため、主要国の金融政策が超緩和局面から引き締め局面へと転換し、金融市場や経済への影響が出ています。
ヘッジファンドは、多種多様な戦略を切り替えつつ、良好なリターンを生み出しています。 米国の利上げにより株式や債券が軟調に推移するなか、2022年もマルチ戦略を行うヘッジファンドは、比較的好調に推移しています。
以下の図を見てわかる通り、ヘッジファンドは値動きが小さいため、リスクを抑制した運用が出来ていることがわかります。
規模による効果
ヘッジファンドは、規模の拡大、つまり運用残高の拡大と効率化に伴い、時間の経過とともに好リターンとなり、投資家の長期的な利益に一致すると言われています。
規模を背景に、高い報酬は若くて有能な人材を惹きつけ、適切な戦略が投資リターンを生み 出し、強固なパフォーマンスにつながるということです。
最近は、人工知能(AI)などを駆使した機械学習による投資が発達し、投資決定に大幅に貢献しています。
一方、新規ファンドの立ち上げのための資金調達は、最大手のヘッジファンド以外にとって困難になりつつあるようです。
このため大規模ファンドと小規模ファンドの二極化が進み、大規模ファンドは迅速に資本を調達して好リターンを達成し、小規模ファンドを吸収するか、閉鎖に追い込む傾向があります。
分散投資
マルチ戦略ヘッジファンドは、多種多様な戦略を採用し、分散投資を行います。
そのため、好機をとらえた最適な資産配分を追求することができます。特定の単一戦略に基づくファンドに比べ、柔軟性が高く、株式や 債券などの伝統的な資産クラスへの相関を抑え、市場低迷の影響を緩和することが可能というわけです。
例えば金融市場で株式・債券相場が同時に下落する局面では、先物やオプション(売買の権利)、クレジット・デフォルト・スワッブ(CDS)、金利スワップ(固定金利と変動金利の交換)など特殊な取引を活用することで利益を上げることも可能だからです。
右肩上がりの相場には弱い
そのようなヘッジファンドですが、デメリットも存在します。もちろんコストがかかることもありますが、上昇相場には強くないということです。
金融市場が不安定なときや下落しているときなどは、前述の通りさまざまな投資手法を活用することによって下落を防いだり安定収益を得ることができます。
しかし、株式が右肩上がりに上昇を続けるような相場では、その上昇分全てを取ることができない戦略のため、パフォーマンスは劣ります。
そのため、投資の中心にヘッジファンドを入れるというのではなく、あくまでサブ的な役割でポートフォリオに組み込むことをおすすめします。
日本で買いづらい
世の中には「自称ヘッジファンド」の投資商品も多数あります。大規模で本当に優秀なファンドは、なかなか個人投資家に枠を拡げていないケースも多いです。
なぜなら、多数の個人投資家から資金を集めるより、一度に数億円単位で買うような機関投資家(銀行や年金など)から集めた方が効率的だからです。
ただし全く買えないというわけではありません。例えば個人投資家向け投資枠を1か月だけ上限10億円で開けます、なんてこともあります。
もちろんそれは金融の専門家経由でしか情報は入ってきませんので、ご興味のある方は専門家から情報を得ましょう。