
ベンチャーキャピタルは、良くも悪くも中身が良く見えないブラックボックスの世界です。
そのため、どのベンチャーキャピタルに実績があるのか、外部からは極めて見えづらいです。密かにリターンを生んでいる優良なVCもいれば、実態以上にうまくいっているように見せているVCもいます。
今回は、ベンチャーキャピタルへ投資をする際に、注意するべきポイントをお伝えします。
1.実績のある過去の投資先はどこか?
プロ野球選手の実績としてホームラン数や打率などがあるように、プロの投資家にも過去の投資実績があります。
これは当たり前の話ですが、なぜかベンチャー投資においては情報をぼやかす人が多く、それについて突っ込む人たちも少ないのです。プライベートエクイティにおいては上場株のように株価が公表されていないことが1つの理由でしょう。
情報をあまり開示しないということは、完全に間違っていることです。トップクラスの活躍をしているVCには、きちんと具体的に、どの企業に、どのタイミングで出資をして、どんな取り組みをして、そこから何倍のリターンを得られたのか、という、具体的な実績とポートフォリオがあります。
もちろんホームページ上などで公表しているケースは少ないのですが、良いVCであれば個別ミーティングなどで教えてくれるはずです。投資のプロとして過去のトラックレコードや実績をきちんと開示するのは当然のことであり、はっきりと言えないファンドはやめましょう。
2.最も信頼関係のある起業家たちは誰か?
ベンチャーキャピタルの投資家にとって、最高の投資チャンスの多くは、これまで投資してきた起業家たちからの紹介事案だと言われています。つまり投資家の力量というのは、どれだけ優秀なスタートアップの創業者たちと信頼関係を築けているのかに言い換えられるでしょう。
またVCの特徴としても、どのようなネットワークに強いのかで差別化されます。ベンチャー業界はコネクションが重要です。例えば上場したベンチャーの創業メンバーが、新しい会社を作り、そこで働いていた従業員がさらに新しい会社を作るなんてことが多くあります。
つまり、有望な企業からは、次々と新世代のスタートアップが生まれるわけです。こうした起業家の ネットワークに深く入れているかは、投資のパフォーマンスを左右する重要な要素です。
3.運用してきたファンドの実績について
VCというのは、お金を集めてからファンドを運用し、そのリターンが確定するまで多くの場合10年間という時間がかかります。言い換えれば、成功するのか失敗するのか確定するまでは、その実情について曖昧にすることもできちゃいます。
極端に言えば、うまくいっていないVCでも、「まだファンドは運用期間中ですから」と言い訳することもできてしまうのです。
だからこそ、そのファンドの投資家が、過去にどのくらいリターンを生み出せたのかを聞くべきです。もしまだファンドを運用中であれば、きちんと現金としてリターンを手にした実現利益と、まだ帳簿上の未実現利益を明確にした上で、どのようなリターンが狙えそうなのか、その見通しを具体的に教えてもらうことが大事です。
4.なぜ有名スタートアップに投資できたのか?
VCの世界は良くも悪くもブラックボックスです。だから時価総額にして1000億円以上の価値のあるユニコーン企業に投資しているだけで、投資家としての実力をアピールするためのわかりやすい宣伝材料になります。
しかし当たり前ですが、有名な企業に投資をしていることは必ずしも投資家としての実力の証明になるわけではありません。むしろ、やたらとそれを自慢をする人物は怪しむべきでしょう。
米国の大型のプライベートエクイティなどは、その株を相対で売り買いをする「セカンダリー取引」がとても多く行われています。相対で値付けに合意できれば、VCの投資家ならその株を簡単に入手することが可能です。そこに、創業者との関係は全くありません。
またプロの投資家でなくても、ここ数年はプラットフォーマーなどの出現により、プライベートエクイティを買うためのハードルは下がっています。プライベートエクイティを買うだけで、もはや誰もがエンジェル投資家を自称できる時代であることは覚えておくべきでしょう。
だからこそ、有名なスタートアップに投資しているからといって自慢しているファンドには、「どうやって」「なぜ」その株を購入できたのか聞いてみるべきです。
5.フェアなルールで運営されているのか?
長期的にそのベンチャーキャピタルが成長できるかというのは、そこのメンバーやファンドマネージャーがフェアな形で成果報酬を受け取っていたり、きちんと世代交代がなされるかという点がポイントになります。
中核となっているファンドマネージャーたちが辞めていったり、チームに亀裂が入ったりするケースの一因になるのが、特定の人物が著しく報酬を独り占めするシステムになっているケースです。
そのファンドが成功して巨額のリターンが生まれても、それが偏ってVCの創業者であったり、一部の役員にだけ配分されるとするケースもなかにはあります。
そのVCの報酬をどう配分するのかというのは、実はファンドパフォーマンスの安定性にもとても大きく影響します。もちろんそれは、そのVCがちゃんと期待以上の利益を出すことができた場合のみですが。