
社債などの債券投資での最大のリスクは倒産です。投資先の企業が倒産してしまうと、基本的には損失が避けられません。
しかし、必ずしもゼロになるというわけではなく、過去の例から見ても倒産したとしてもいくらかは返ってきます。(参考記事)
「社債投資してる企業が倒産(デフォルト)」なんてことは考えたくもありませんが、万が一ということもあるので、今回はその対応方法などについてお伝えします。
倒産手続きが始まったら
「倒産」という言葉は、基本的に日本国内における会社更生法を前提としています。会社更生の手続きが始まると、保有している「債券」は単純な「債権」となります。
倒産しない前提で投資していた場合、基本的に大きく損害が発生しますので、作業としては敗戦処理です。
せめて回収率をできるだけ高くするよう努力することになりますが、社債の保有者に努力する余地はどれくらいあるのでしょうか。会社更生に入ってしまうと債権者にできることといえば、債権者集会での再建案について賛成・反対の投票をすることくらいです。
債権者集会の投票は債権額の過半数で決まります。これは株主総会などと違って、債権者の数は関係ありません。1人の大口債権者が51%の債権を持っていて、残りの100人で49%持っているような場合は、51%を1人で持っている人の判断で決まります。
もし相手側(発行体の管財人)が債権の51%を持っている債権者と正式に決定する前に、事前に当事者ベースで非公式に合意をとっていたりすると、もはや手の出しようがなくなります。
大口保有者に売却も
機関投資家などの場合、すでにそれなりの量を保有していて、できるだけ多く集めたいと思っている場合もあります。その投資家は多少のコストを払ってでも債権を集めたいので、高く買ってくれる可能性があります。
したがって、 小口の債権をもっている場合は、できるだけ多くの金融機関に、自分が持っている事実と売却の意思があることを知らせると、効果的に売却しやすくなります。
そのまま保有していると
売却できずに保有し続けた場合ですが、更生計画は大抵の場合、債権額のかなりの部分がカットされ、残った部分も数年にわたる分割払いとなります。
たとえば100万円の債権額であれば、85%カットされ、残りの15%を3%ずつ5年間で返済する、といった具合です。
デフォルトした社債を買い取る業者も
会社が倒産しそうになった場合、すでに債券価格は大幅に下落しています。「もはやここまで下がっているのだから、今売っても仕方ない。最後まで付き合う」という心情になることもあります。
実際にデフォルトした場合、再建計画が発表され、回収率が15%であると発表されたとします。もしそのときに、その債権を15%で買うという投資家が現れたら売るべきでしょうか?
再建計画が予定通り実行されずに頓挫する可能性もあるうえ、回収に5年もかかるものを買うと言われたら、投資家としては売ってしまったほうが明らかに有利に見えます。
実は、回収率は再建計画よりも高くなる場合があります。管財人としてはともかく再建しやすいような計画を立てる必要がありますので、基本的にかなり保守的に見通しています。
できるだけ大きく債権カット、つまり債権者に損を押し付けようとします。押し付ければ押し付けるほど、再建の可能性が高くなるためです。
その結果、再建計画を遂行しているうちに予定よりも原資が多くなることがあるのです。
ヘッジファンドのディストレス債投資
ディストレス債投資という手法を使うヘッジファンドなどはこの手のことまで非常に細かく調査しますので、回収率が当初案よりも高くなる可能性を予測できることもあります。
実はヘッジファンドのなかには、回収価格がいくらになるか調査するのが面倒なので、倒産した銘柄は「何でもいいから15%で買う」というファンドもあります。
回収率については、米国でも平均40%程度になりますので、15%だとしても複数買っておけば投資全体として勝てる可能性はあります。
それ以外にも倒産発表直後の狼狽売りにより、売られ過ぎで価格が大きく下がってしまうこともあります。そこで買っておいて、その後に価格が落ち着いて 戻ってきたところで売る、という相場の需給で短期売買するようなファンドもいます。
これは、需給関係がよくわかっているファンドが行う取引です。倒産した会社の債券は流動性が低いため、売値と買値の価格差が大きく、一般的な投資家にはなかなか売買で収益をあげる対象にはなりません。