
債券投資で最も重要なリスク
社債などの債券投資において最も重要なリスクは「信用リスク」です。そしてその信用リスクの対象が「最終的な倒産リスク」なのか、「投資期間中に発生しうる価格変化の可能性とその度合い」なのか、という2点です。
混同されているケースが多く見られますが、社債の場合、いずれを重視するかで投資行動も異なってきます。
償還日に倒産さえしていなければ元本を返してもらえる一方、それまでの間に市場金利の動向や業績などによって、社債の流通市場における値段は大きく下がってしまうこともあります。
とはいえ、債券投資に関しては基本的に満期である償還日まで保有する前提であることが多いので、最終的な倒産リスクさえクリアできれば問題ないと言えます。
具体的な分析内容
まず検討すべきことは、投資先が最後の一線を超えるかどうかです。最後の一線とは、会社更生法や民事再生法の申し立て、破産手続きの開始など、いわゆる倒産してしまう状態を指します。
本業のビジネスがどんなに痛んでいようが、満期日に満額償還できてしまえば、そこまで保有し続けた投資家に損失はまったく発生しません。
もし、企業の倒産が本業の収益力だけであれば、その収益力を分析して正確に予想できれば信用リスクを正しく判断することができます。
しかし、本業がどんなに悪化していても倒産しない場合もあれば、逆に、通常であればファイナンスがつくと思われるような状況でも、いきなり会社更生を申し立てる場合もあります。
その決定的な違いを見極めるには、「資金繰り」に注目することです。
資金繰りをみるには、 対象企業のキャッシュフローを見極めることです。
一番よく使われる指標は 「EBITDA」です。イービットダー、もしくはイービットディー エーなどと読みます。
EBITDAとは
EBITDAとはEarnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略で、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。
ざっくり言うと、「減価償却する前の営業利益」と覚えておいて大丈夫です。
どうしてこの指標を使うのかというと、儲けを判断する際に最終損益をみてしまうと、借金の多い会社と少ない会社では、本業で儲ける力が同じだとしても、支払利息の少ない分だけ借金の少ない会社のほうがお金を稼ぎ出す力が高いように見えてしまうからです。
また、税金も国によって税率が違うため、その影響を排除したほうが収益力がわかりやすくなります。
EBITDAさえ良ければいいというものではありませんが、本業から発生する現金創出能力を表した数字に近いことから、EBITDAは信用リスク分析をするうえで、多用されています。
この数字については、返さなければならない借金の大きさに比べてどれくらいあるのかが重要になります。EBITDAが少なくても借金がなければ倒産するはずがありませんし、EBITDAが1兆円ある会社でも借金が10兆円あれば、それはやはりキャッシュフローが不十分だということになります。
「EBITDA純有利子負債倍率」を見よう
EBITDA有利子負債倍率(DEBT/EBITDA倍率)とは、有利子負債がキャッシュフローの何倍あるのかを表す指標です。
つまり、その企業における有利子負債を何年で返済できるかを判断できます。
キャッシュを稼ぐ力の何倍の借入金残高があるのかを示しますから、数字は低い方が財務内容は良好といえます。
EBITDA 純有利子負債倍率のどのぐらいの倍率が投資先として適切かは、業界にもよるため一概にいえませんが、一般的に3倍程度が目安です。
投資という観点からは、投資先企業に対する市場が心地良いと思うEBITDA純有利子負債倍率の水準をつかんで、そのレベルの変化を見落とさないように心がけることが重要となります。