
債券投資の中でも、富裕層や機関投資家等、大口投資家向けに主に発行されている「クレジットリンク債」についてお伝えします。
日本においては、国債の低金利が続いており、円建社債も例外ではありません。利回りの高い外貨建て債券へ投資すると為替リスクが発生してしまうため、円建でなおかつ普通社債よりも高い利回りが取りたい、という投資家に向いている債券の1つです。
クレジットリンク債とは
クレジットリンク債とは、クレジット・デリバティブ・スワップ(CDS)が内包された仕組債で、投資家は当該債券の発行体とCDSの参照企業双方の信用リスクを負担するために、通常の社債よりも高い利回りが期待されます。
クレジットリンク債の仕組み
発行体は特別目的会社を設置してそこに額面相当の金額を投資家から集め、そのお金で国債などの倒産リスクのない債券を購入しておき、参照組織が倒産したら保有債券を売却して投資家にお金を払う仕組みです。この仕組みは「クレジットリンクノート(CLN)」と呼ばれます。
以下の図は、クレジットリンク債のお金の流れを示しています。簡単に言えば、参照企業の社債を買って保有していたのとほぼ同じ効果になります。
社債が発行されてなくても投資が可能
こんな仕組みを付けるなら最初から社債を買えばいいようにも思えますが、 社債の場合は、そもそもその企業が発行していないと買えません。発行していた場合でも、流通市場で誰かが売却したものがないと買えません。
しかし、CDSは発行体の実際の債務がなくても取引が成立するため、あたかもその企業の社債に投資したと同じようなリスク・リターンを作り出すことができます。
また、投資家の要望に合わせた条件で組成することもできます。例えば、以下のような条件を出すことによって対応可能な発行体やCDSの取引相手を探すことができます。
- 円建て
- 年限5年以内
- A社orB社を参照
ただし、この商品を作るには誰かが取引の相手方になってくれる必要があります。金融機関によってはその条件では組成できませんと断られるケースもあります。
クレジットリンク債特有のリスク
健全な目的で発行される場合がほとんどなので滅多に該当することはありませんが、CDSの場合は、対応する債務がなくても作り出すことができるため、使い方を誤ると危険な面もあります。
そのあたりは、『マネーショート』という映画でCDSの複雑な取引が危険を積み上げていくストーリーとして取り上げられています。
理屈のうえでは、 借入金が100億円しかない企業であっても、その会社を参照組織として1兆円分のCDS取引を行うことすらやろうと思えばできてしまいます。
クレジットリンク債は社債の代替の投資をすることができる便利な面もありますが、場合によっては投機的な商品にもなりますので、実際に投資する際には十分な注意が必要です。
「債務保証」と「CDS」
クレジットリンク債を理解する上で必要な、「債務保証」と「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」について、説明を加えておきます。
債務保証
債務保証は昔からある取引で、債務者が倒産などの理由で返済できなくなってしまった場合に、債務者に代わって債権者に 返済するというものです。
債務者の信用リスクをとり、その代償としてリターンを得るという意味です。債務保証をする人は保証料をもらって、債務者が返せなくなってしまった場合に、債務者の代わりに債権者に返済しなければなりません。一方、債務者が無事に返済できれば、もらった保証料はそのまま保証した人の利益になります。
CDS
CDSは、わかりやすく言うと債務保証をデリバティブ取引としたものです。
CDSにおいて損失を保証する行為のことを「プロテクションを売る」といいます。これは、プロテクションの売り手がプロテクションの買い手からプレミアムをもらい、満期まで何もなければプロテクションをもらった分は利益になるしくみです。 満期までの間に倒産してしまうと、債権を回収できた額と元本の差が損失となります。