
2022年現在、日本には現代アートブームが来ているといっても過言ではありません。それを聞いて「よし!アートを買うぞ!」と思った方はちょっとだけ待って欲しい。
なぜなら今、日本で起こっている現代アートブームは日本限定の局地的トレンドで終わってしまう可能性があるためです。
この記事では、そんなアートを購入する機運について筆者の考察を交えながら分析をしていきたいなと思います。
日本に起こっているアートブームについて
SBIアートオークションの一回のオークションの落札総額が10億円を超えたり、アートフェア東京での出展ギャラリーの売上総額が過去最高となるなど、今までにないアート市場の盛り上がりを見せています。
しかし、この盛り上がりの背景にはいくつか気になる点もあります。
例えば、そもそも日本のアート市場は世界的に見たら小さいという点と、国内の評価と海外の評価に差異があるという点です。
日本の現代アートの売買の市場に関しては400億円程度と言われています。これは世界の市場の内1%にも満たない規模なので、もともと小さい市場がちょっと拡大したといって、それが大きなブームになっているかは慎重に考えたほうが良いです。
次に、国内外の評価の違いについてですが、これも気を付けなくてはいけません。なぜなら日本国内でしか評価されていない作品は、そもそも世界規模で見ると、ほんの小さな部分的盛り上がりでしかないのです。
なので、今の日本に現代アートブームが起こっているからと言って、それが投資のチャンスになるかというと別の話になってきます。
とはいえ、展示会やアートフェアに行くと分かるのですが、日本でアートに熱気や活気があふれていることは事実であると言えます。

アートは投資になるか、投機になるか
投資と投機というのはワンセットで語られるかなと思います。
ではアートは投資でしょうか、それともギャンブルでしょうか?
答えは、「金額による」と言えます。
なぜなら、アート投資のメリットでもある、金額の下がりにくさというのが関係してきます。
アート投資では基本的に、セカンダリーマーケットと言われるオークション等での価格が重要視されるものです。
ということはアートが投資になるには、このセカンダリーの価格が上がっていかなくては話になりません。
ここで「金額による」といった意味なのですが、
あなたの買おうとしているアートにセカンダリーでの価格がついているなら、それは投資になりえます。
なぜなら一度価格のついた作品の価値はなかなか下がりにくいからです。
一方で、まだセカンダリーの価格のついていない新人作家の作品なんかは、どうしても投機という立ち位置になってしまいます。
なぜなら、その作品がセカンダリーに流通して、高値になる可能性は限りなく低いからです。逆にもしセカンダリーに流通できるようになると、びっくりするほど価値が上がったりします。
これがアートが投資にも投機にもなるという私なりの見解です。
アート投資のメリット
もし仮に素晴らしい作品を手に入れることが出来るとしたら、アート投資にはどんなメリットがあるでしょうか。
①価値が下がらない・下がりにくい
アート作品は現物資産であることと、希少性があることから価値が下がりにくいと言われています。
また、一度でもオークション等で落札されたような作品は、その価値が記録に残るので、その価値が全くのゼロになってしまうということはほぼほぼありません。
むしろ、作者の人気や認知度向上によりどんどんと価値が上がっていくこともあります。
更にアートは作者が死んだ後に、新作が出なくなることから希少性が上がり、さらに価値を高めてくれることもあります。
②長期的にリターンを得やすい
アート投資は買ってすぐに転売するようなことはマナー違反とされる風潮にあります。逆に長期保有すると価値が上がりやすい投資先でもあるので、アート投資をする際には、5年~10年の長期スパンでの保有を想定しておいた方がいいでしょう。
長期保有は次に売買する時に大きなメリットにもなります。特に人気の作品では、保有している間に希少性がさらに高まり、競争率も高くなる傾向にあるからです。
アート投資をする際には、こういった長期保有前提でリターンの得られるものを選定することが重要な指針になってきます。
アート投資のリスク・デメリット
アート投資は、他の現物資産同様に、汚損・破損のリスクがあります。
他にも、日本でアート投資をする場合には、海外ほど税制面でアートが優遇されていないということもあります。
どちらにせよアート投資は素人だけでは、ギャンブルになりがちなので専門家に意見を求めることが必要になってくる投資商品と言えます。
アート投資のまとめ
投資としてアートの購入を検討している人は、入念なリサーチが必要です。間違っても、その場の勢いで、新人作家の作品を買うようなことがないようにしてください。
逆に投資ではなく、新人作家を応援する気持ちで、ちょっとしたエンジェル投資の感覚で新人作家の作品を購入するのはありかと思います。
もし将来大物になったらというワクワク感をあなたは一緒に手に入れることができます。
川神わかば
アート歴29年。和紙切り絵アーティスト。ユネスコの無形文化遺産に登録された伝統の和紙を使って1000年残る肖像画を作っています。大学・大学院ではものつくりについて学び、創作活動に活かしてきました。また、多くの偉人たちが肖像画を残してきたように、作品を作ることによってその人が歴史に名を残すような偉業を成し遂げてもらえるようにと思いを込めて作品を作っています。
https://www.instagram.com/wakabarts/