
日本では「エンジェル投資」や「プライベートエクイティ投資」という分野が、長らく誤解されつづけています。
ここでは、日本人のそういった投資に対する誤解を紐解いていきます。おそらくこれらが未だ日本でスタートアップに対する投資が広がらない理由とも言えます。
①実際は「令和の虎」ではない
一つ目の誤解は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルの投資家たちが、スタートアップの起業家たちに対して、お金を「出してあげる」というものです。
投資家たちの立場が上であり、若い起業家たちの「情熱」や「アイデア」を買ってあげようという構図です。
このイメージが広がったのは、今は「令和版」としてネットで話題になっていますが、「マネーの虎」というテレビ番組でしょうか。そこではビジネスで成功した実業家たちが審査員となって、スタジオにやってきた起業家たちのプレゼンテーションを見て、気に入ったら 本当に出資する番組です。この企画はエンタメとして非常に面白かったため、アメリカやイギリスなどでも同じようなプログラムがありました。
しかし、実際にエンジェル投資の現場で見られるのは、まったく逆の関係性です。
過去にスタートアップで成功したことがある連続起業家であったり、他では真似できないようなビジネスプランを持っている優秀な起業家たちは、あっという間にお金を集めてしまいます。プレゼンテーションをして売り込まないといけないのは、むしろ投資家たちの方です。
そこでは、単なるマネーゲームをやっているわけではなく、イノベーションを加速させるための付加価値競争をやっていると言えます。そのためエンジェル投資家たちは、自分自身もかつてスタートアップの起業で成功した経験であったり、ビジネスの修羅場をくぐりぬけた実務経験を持っている人たちが圧倒的に多いのです。
②直感で投資しているわけではない
二つ目の誤解は、エンジェル投資とは直感で投資をするものであり、インスピレーションが大切だということです。
いわゆる勘も含めた目利きによってスタートアップを選別すれば、パフォーマンスの上がる案件が見つけられるという勘違いです。
そうした誤解は、自伝本やネットの記事によって盛られているのが理由の1つです。なぜならドラマチックな逸話をピンポイントで紹介するほうが、多くの人を魅了することができるからです。
例えばソフトバンクグループの孫正義社長は、かつて中国のアリババグループの創業者であるジャック・マーと面談をしたときに、その目を見て、すぐに投資を決断した「伝説の5分間」というものが語り継がれています。
しかし実際は、ソフトバンクは1990年代から、無数のスタートアップたちのデューデリジェンスを行っています。当時アリババで働いていた経営幹部によれば、ソフトバンクは金融機関の協力もあおぎながら、有望なスタートアップを洗い出しており、それを孫正義が一つずつ、短時間の連続ミーティングをこなしていったのが真相だと語っています。つまりジャック・マーは、偶然に呼ばれたわけではなかったのです。
近年では、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルは、さまざまなデータを集めて成長するスタートアップの兆候を見つけることも、当たり前のように行われています。
例えば新しいアプリのトラフィックデータや、経営幹部の職歴のデータであったり、プレスリリースの内容まで、徹底的に収集している投資家も多いです。
一流の投資家が一目惚れで投資を決めることはまずありえない
私もいろいろなエンジェル投資家や富裕層の方とお会いしていますが、基本的に成功している人は投資対象をかなり調べています。エンジェル投資は直接経営者に会って判断することもできますが、他の一般的な投資ではそうはいきません。
しかし、上場企業であればIR情報としてかなりの情報が公開されていますし、債券や投資信託であれば目論見書などで詳細にデータを見ることができます。
一般の個人投資家がそこまで投資に対して調べるのはまず難しいことです。そういった時に役に立つのが金融の専門家です。投資、資産運用をする人は、信頼できるアドバイザーを見つけることが最短の成功への道かもしれません。