
プライベート投資戦略の中の「プライベート・ファンド投資」。
私募型ファンドの形式を取ることが多いですが、今回はその中でも比較的知名度の高い「ヘッジファンド」について説明します。皆さんもヘッジファンドという言葉は聞いたことがあるはずです。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドの最大の特徴は、市場の上下に係わらずプラスのリターンを獲得する「絶対収益を狙う運用」です。マーケットが上がっても下がって利益が出る運用として、富裕層に人気の投資先です。
近年は様々な投資家層から魅力的な投資先として広く認識されたヘッジファンドですが、その投資対象や投資手法は千差万別です。
レバレッジを利かして株式に投資するファンドや、買いだけでなく売り建てをすることにより相場下落時に利益を得るものまで、たくさんの運用手法があります。
つまりヘッジファンドとは概念の単語であり、実際に投資するには個別の運用手法やマネージャーの実績などをよく見る必要があります。
ポートフォリオのリスク分散に
ヘッジファンド投資をする目的は、運用ポートフォリオのリスク軽減です。市場全体の動きに左右されずらいヘッジファンドは、相場下落時にポートフォリオ保有株が下落して損失が出たとしてもそのクッションになります。
そのため、ヘッジファンドはポートフォリオの一部に留めておき、ヘッジファンドに集中投資をして大きな利益を狙うという考えはやめた方が良いです。
ヘッジファンドの運用手法の例
ファンドごとに様々な運用手法を用いていますが、一般的な手法を説明します。単語が難しいので完全に理解することは難しいかもしれませんが知っているのと知らないのでは実際のファンド選びをするときに大きな差になります。
【グローバル・マクロ戦略】
マクロ経済の予測に基づき、世界各国の各市場の方向性を予想し、収益を得る戦略。
主要なマクロ経済指数および金利の変動に起因する通貨、株式、債券への影響など、グローバル経済の状況変化を狙って利益を追求する投資戦略です。
投資対象は特に制限を設けず、先進国、新興国を問わず世界中の多種多様なもの(例えば、株式、債券、商品、デリバティブ商品、為替など)を投資対象とします。
【マーケット・ニュートラル戦略】
市場リスクを限りなくゼロに近づけた上で、市場リスク以外の要因に収益機会を見出す戦略。
買い建て金額(ロングポジション)と売り建て金額(ショートポジション)をほぼ同額にして、マーケット全体が変動するリスク(市場リスク)から運用資産の動きを遠ざけます。
株式市場全体の動きが予想外に下落に見舞われるなどのリスクからは中立な状態になれば、純粋に銘柄選択によって運用成績が決まるようになります。
【株式ロング/ショート戦略】
株式の買いポジションと売りポジションを組合わせる戦略。1950年代に最初に確立された伝統的な投資戦略です。
値上がりが期待される銘柄の購入(ロング)と値下がりが予想される銘柄の空売り(ショート)を組合せて投資することで値動きの差に収益機会を求めます。
株式市場の見通しに基づき、ロングとショートの比率を機動的に変更することで、株式市場の値動きによる影響を抑制しながら収益を追求します。
先物およびオプションをこの戦略における空売りに代えて利用することがあります。
【アービトラージ戦略】
値動きの相関性等を基に、二つの商品の価格差を利用する戦略。
二つの関連性の高い銘柄の一時的な価格差(ミスプライス)に着目して収益機会を追求する投資戦略です。
この戦略は高い技術が必要であり、また流動性および効率性を併せもつ狭い市場セグメントを利用します。
【イベント・ドリブン戦略】
再編、経営難、その他の企業の出来事(イベント)を収益の源泉とする戦略。
企業の再構築、合併、買収、破綻等の事象がもたらす価格変動に収益機会を追求する投資戦略です。
合併や買収に関係する企業の株式の購入と空売りを同時に行なう、「合併アービトラージ戦略」と、財政難にあり債務不履行状態にある企業の債務、株式、商業手形に対して投資を行なう「破綻証券戦略」が代表的です。
【コモディティ・トレーディング戦略】
金融先物、商品先物等に投資を行なう戦略。
全世界の上場金融先物、商品先物、通貨市場に投資を行なう戦略です。
資金の一部をデリバティブ商品に投資し、残りを現金で維持します。
コンピューターを駆使して過去の値動きを分析し、機械的な運用を行なうのが主流です。
マネージド・フューチャーズ、あるいはCTA(商品取引顧問業者)と呼ばれることもあります。
【クオンツ戦略】
金融工学を活用した運用戦略。
高度な数学的手法を用いて市場を分析したり、金融商品や投資戦略を分析し、それぞれ独自の運用モデルに従い、機械的に分析した結果に基づいて投資判断を行うこと。
機械的な投資が主体となるため、人間の感情による判断を排除した運用を行うことが特徴です。
ヘッジファンド投資の注意点
絶対収益を狙い、ポートフォリオのリスク軽減に魅力的なヘッジファンドですが、他の投資にはない注意点があります。主に以下のものです。
・マネージャーの腕次第
ファンドマネージャーの力量がリスク度合いに大きく影響するということです。運用を任せるファンドマネージャーが、本当に収益を稼ぐ能力があるのかを見分けるのは簡単ではありません。
・換金制限がある
一般にヘッジファンドは途中換金に制限を設けています。解約ができるタイミングは予め決められており、四半期に一回の特定日のみなどのケースが多く、投資家はその特定日のかなり前までに解約の申し込みを行う必要があります(45日ルール等)。
・運用が見えづらい
通常の公募型投資信託とは違い、運用報告書などの情報開示が少ないです。また、運用の中身はリアルタイムで全くわかりません。日々売買をするようなヘッジファンドが多いですが、定期的な運用報告書が出た頃には1か月以上前の内容なのでリアルタイムでは全く違う内容になっているかもしれません。
ポートフォリオの一部だけで良い
プライベート・ファンド投資におけるヘッジファンド投資は、投資するとしてもポートフォリオの一部に留めることです。また、絶対収益といっても莫大な利益を狙う運用ではないのでその点も慎重に見極めるべきです。