
「ユニコーンクラブへ、ようこそ」
2013年11月、アメリカの投資家であるアイリーン・リーが書いた記事は、いまでも多くの人たちに読まれているコラムです。そこでは、未上場企業でありながら、企業価値で10億ドルを超えるようなメガベンチャーを、「ユニコーン」と名付けました。
2003年から2013年までの10年間において、アメリカではユニコーンが39社生まれていたと言われています。1年間で平均4社、極めて珍しい存在ながら、それらは巨大なリターンをもたらしました。
ところが2021年においてユニコーンは、ありふれた存在になっています。2013年までに累計9社しかいなかったユニコーンの数は、いまや世界中で900社以上になっています。
毎日のように新しいユニコーンが誕生したというニュースを目にしていると思ってしまうほどです。今後も、増え続けるユニコーンとプライベートエクイティ投資が、加速度的に化学反応をおこしていくでしょう。
そもそも、こんなにもユニコーンが増えているのか。それには主に3つの理由があります。
理由1.超大型ベンチャー投資の台頭
スタートアップの起業家は、誰にも文句をいわれずに、ひたすら自由に成長を追い求めたい、さまざまなプレッシャーを負わされたくないというのが本心でしょう。そんな彼らに素早く好条件で、サクッと100億円単位のお金を投資する投資家(ベンチャーキャピタル)が台頭しています。
最近では、ソフトバンクの孫正義氏が立ち上げた「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が有名です。有望なベンチャーに対して、全方位でお金を投じ続けており、10兆円ファンドとなっています。「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」については別の記事で詳細を書きます。1兆円ほどのお金を、わずか数カ月で使い切るほどのペースが話題となりとんでもない金額とペースで投資を実行しています。
こうした新しいお金の出し手たちが、ユニコーン量産時代を後押ししていると言えます。
理由2.スタートアップによるグローバル展開
グーグルは2004年、アメリカで1番の検索エンジンとして株式市場に上場しました。一方フェイスブックは2012年、アメリカだけでなく欧州、アジア、日本にまでその影響力を拡大させてから、株式市場に上場しました。スタートアップにとって、グローバル市場を制覇することが必須になってきているとも言えます。
そのために必要なのは、できるだけお金をたくさんかき集めて、赤字を出し続けてでも、ポテンシャルのある海外マーケットを奪いに行くことです。そしてライバルたちに差をつけたあとで上場を果たすことができれば、グローバル市場から大きな利益を得られます。
スタートアップのグローバル展開は、上場企業すらも打ち崩す勢いで進んでいます。
理由3.新興国で急増するスタートアップ
世界のユニコーンが増えているもう一つの理由は、新興国で新たなインターネットユーザーが激増していることです。特にインドやインドネシア、ブラジルといった、人口が爆発的に増えている国々では、かなりの勢いでスタートアップ企業が生まれています。
例えば、いま話題沸騰なのがインドのユニコーンです。2021年にユニコーンの数は約40社から約80社に倍増しており、2022年には120社以上になると言われています。背景には億単位のスマホユーザーを母体にして、小売り、教育、物流、エンタメ、農業など、すべての産業でDXが起きているからです。
プライベートエクイティ投資で日本の経済復活を
そんな中で、日本はどんどん取り残されています。世界のベンチャー投資額ランキングを見ても日本は16位です。今後さらに新興国でのスタートアップ増加により投資額が増えることを考えると、このままだともっと落ちるでしょう。
日本でも、国を挙げてスタートアップやベンチャー企業を増やそうという政策が始まっています。しかし、世界の動きを見ても明らかなことは、「起業家」だけ増えても市場は拡大しません。起業家が増えると同時に「投資家」も増えないと意味がありません。
投資、資産運用は上場株やETF、投資信託などだけではなく、未上場株であるプライベートエクイティ投資も選択肢に入れるべきでしょう。投資についてはリスクとリターンを考慮しろと言われていますが、間接的に日本の経済を活性化し、景気を良くし、結果全ての金融資産の評価が増加する。それがプライベートエクイティ投資の目的の1つだと思います。