
相場は時に大きく動き、下落することもあります。懸念材料や、不透明感のあるイベントが多くある中で大きな下落局面が訪れた時には、メンタルを強く持ち、冷静に対処することが投資の鉄則です。
私は長らく富裕層の投資家と関わってきました。リーマンショックのような時でも保有資産の現金化など極端な行動に出る方はあまりいなく、ほとんどが冷静な対応でした。
投資で成功している富裕層は、自分の資産管理、ターゲットとしている運用期間や投資のゴールを理解しているからではないかと思います。
そこで今回は、行動経済学で見た投資において陥りやすい心理的ワナをいくつかご紹介します。
「近視眼的損失回避」
人間は、明日や1か月後といった短い期間を念頭に意思決定する傾向があります。また、利益よりも損失から受ける影響の方が大きい傾向があるということです。
つまり、長期的には利益が期待できても、短期的な損益を気にしてしまう傾向にあることです。具体的には、
- 毎日損益が気になってしまう。
- 薄利で利益確定をしてしまう。
長期的に保有すれば、一定のリターンが期待できる場合でも、相場変動時に日々の損益を重視してしまいます。結果短期での売却を行ってしまい投資機会を逃してしまう可能性があります。
「ハーディング効果」
周囲の人々と同様の行動をとることで安心感を得ようとする人間の社会的性質。集団の中で一人だけ他と異なる行動をとることには心理的な困難が伴うため、たとえ周囲の人が非合理的な行動をとっているように見えたとしても、それに合わせてしまう傾向があります。
- 株が大きく上がっており、自分も早く株を買わなければと焦る。
- 我慢して持っているつもりだったが、周りに売っている人が多いからと売ってしまう。
自分にとって最適でない投資行動になってしまう可能性があります。SNSなどだけで投資情報を収集して自身で運用している方は要注意です。
「確証バイアス」
人は自らの考えや先入観を裏付けたり支持するような情報を無意識的に選び、逆の情報は無意識的に選ばない傾向にあります。
- すぐに株は下がると思うので、「慌てて株を売らない方がいい」などという意見を信用しない。
- 良い銘柄だと報道される中、唯一弱気のアナリストがいた、このアナリストの意見を全て鵜呑みにしてしまう。
冷静な投資判断に必要な双方向の情報が入ってこなくなり、結果的に間違った判断や運用成果の低下を招く可能性があります。
「オーバーコンフィデンス(自信過剰バイアス)」
自分の能力を過信することで状況の正確な判断や対応ができなくなること。過去の成功体験にとらわれ自分だけは大丈夫だと勘違いしてしまいます。
- 相場はここが底で買い時だと一度に全額投資してしまう。
- 前回もこのくらいが高値だったのでと、利益確定を感覚的にしてしまう。
リスクを抑えるための分散(時間分散、銘柄分散)ができなくなり、過度のリスクをとってしまいます。また、頻繁に売買を繰り返してしまい、投資機会を失ってしまう可能性があります。
知ってるか知ってないかだけ
少し難しい言葉が並んでしまいましたが、行動経済学における投資のワナをご紹介しました。当てはまってるという方も多いのではないでしょうか。
これらは、知っていることが重要です。人間は誰でもこのように考えてしまう傾向があります。投資、資産運用も銘柄選びや手法なども重要ですが、共通していることはメンタルを強く持つということです。
時に不安になった時にこれらのワナのことを思い出せば、「おっと危ないところだった」と非合理的な投資行動は避けられるでしょう。
投資は冷静に。