
プライベート・エクイティ投資で、創業前や創業間もないシード期の企業に投資することを「エンジェル投資」といいます。
資産運用のための投資というよりかは、自らの知識・ノウハウを活かし直接投資先の企業の株を持ち、伴走しながら応援するという意味合いが強いです。
今回は、そのエンジェル投資の内容と、エンジェル投資家にとって特に優遇されている「エンジェル税制」についてお伝えします。
エンジェル投資とは
エンジェル投資とは、創業して間もない企業や株式市場に未上場の企業に対して、資金を供給する投資のことを指します。
創業間もない企業が成長していくには、資金調達が必要です。資金調達の手段は例えば、
- 銀行などの金融機関から融資を受ける
- 国や地方自治体から助成してもらう
- ベンチャーキャピタルから投資を受ける
といったような様々な方法がありますが、エンジェル投資もその方法の一つに数えられます。
エンジェル投資では、個人が企業に対して直接出資します。投資の見返りは、その会社の株式や債券を受け取るパターンが一般的です。
これまでエンジェル投資には少なくとも数百万単位の資金が必要だったので、それをおこなうのは資金力のある投資家や経営者が大半でした。
しかし近年では、複数人が資金を持ち寄ることができる「株式投資型クラウドファンディング」サービスが誕生して、一般の投資家でも少額からエンジェル投資に取り組むことができるようになってきています。
エンジェル投資の魅力
エンジェル投資の魅力は、大きく分けると二つです。
1つは、非常に大きなリターンが見込めること。創業間もないスタートアップ企業に出資をするので、その企業が成長し、上場やバイアウトをするまで保有していた場合は数十倍から数百倍に価値が上がる可能性があります。
例えば、自らPayPalやPalantirなどの大企業を創業し、エンジェル投資家でもあるピーター・ティール氏は、2004年にフェイスブックに50万ドル出資し、2012年のIPO時に6億ドル以上売却することに成功しています。それだけ計算してもたった8年で1,200倍です。これは極端な成功例ですが、このような莫大な利益を狙えるフェーズというのがシード期のプライベート・エクイティ投資です。
もちろんすべてがうまくいくとは限りません。エンジェル投資では、10社投資をして1社利益が出れば大成功とも言われています。しかも数年間、ながければ10年以上も資金は動かせません。自身が起業家やスタートアップに詳しいのであれば成功しやすいですが、そうでなければあまり積極的に投資するのは控えた方が良いでしょう。
もう1つが、ベンチャー企業の成長に大きな影響を与えられること。自身の知識経験を投資先の企業を応援することにより、その企業の成長に寄与できます。日本では、スタートアップや起業家が少ないと言われています。国の成長のためにはベンチャー企業がもっと活発になることが重要で、それらの新しい現状を打破できるような新サービスが増えることにより人々の生活もより便利になるでしょう。それにより自身の経営力も上がり、人脈なども大きく増やすことができます。
エンジェル投資は税制面で優遇されている
エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。ベンチャー企業に対して、個人投資家が投資を行った場合、投資時点と、売却時点のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。
・ベンチャー企業へ投資した年に受けられる優遇措置
以下のAとBの優遇措置のいずれかを選択できます。
・未上場ベンチャー企業株式を売却した年に受けられる優遇措置(売却損失が発生した場合)」
未上場ベンチャー企業株式の売却により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)ができます。
※ ベンチャー企業が上場しないまま、破産、解散等をして株式の価値がなくなった場合にも、同様に翌年以降3年にわたって損失の繰越ができます。
※ ベンチャー企業へ投資した年に優遇措置(AまたはB)を受けた場合には、その控除対象金額を取得価額から差し引いて売却損失を計算します。
投資方法について
エンジェル税制における株式を取得する方法(投資方法)については、以下の3つの方法があり、それぞれにおいてエンジェル税制の確認申請の方法が異なることにご注意ください。
ご自身がスタートアップ経営の経験がある場合や、知り合いの企業に直接出資するという機会がある方はうまくエンジェル税制を活用し、エンジェル投資をしましょう。
そうではなく、純投資として行いたい方は、うまく案件を見極めて、金額も少額にするなど、慎重に投資した方が良いでしょう。
プライベート・エクイティ投資においては、シード期への投資よりかはミドル・レイト期への投資の方がリスクも少なく魅力的です。そのあたりは別の記事でご紹介しいますのでご覧ください。